パリ国際サロン/ドローイング・版画コンクール 報告
パリ国際サロン第30回記念展報告 / 受賞者一覧
コミンヌ会場 ベルニサージュ風景より
会期:2016年12月9日(金)~11日(日)
会場:パリ市3区 エスパス・コミンヌ
ギャラリー・デュ・マレ
パリが1年で最も賑わう時期に「第30回記念展」として開催
パリで古くから芸術作品発表の場として定着していたサロン形式を採り入れ、1985年、邦人作家の優れた作品をパリで広く知らしめることを目的にスタートした「パリ国際サロン」は今年で30回を数え、2016年12月9日(金)から11日(日)までの3日間、パリが1年で最も賑わう時期に「第30回記念展」として開催。
パリ3区内マレ地区に位置するエスパス・コミンヌとギャラリー・デュ・マレの2会場には日本作品137人199点(個展部門14名56点、ドローイング部門33名45点含む)が賑々しく展示された。
パリ マレ地区の2会場で開催された
エスパス・コミンヌ
広く開放的で明るいモダンなコミンヌの会場
ギャラリー・デュ・マレ
ヴォージュ広場、プロ画家達憧れの企画画廊
話題のアートスポットエリアのエスパス・コミンヌ
作品を前に何度も美術談議に花を咲かせる(左から)ル・サロン会長ドゥラルフ女史、本展会長ザッキ氏、ロワリエ氏
会場のエスパス・コミンヌ周辺は、中世より歴史ある貴族の館が立ち並んでいたエリアで、リノベーションを繰り返しながら現在、その広大な屋敷や跡地はピカソ美術館やカルナヴァレ博物館をはじめとする著名なミュゼや劇場、アートを楽しむイベントホール等に姿を変えている。
同様にエスパス・コミンヌも、高い天井にかつての面影を残し、溢れる自然光が融けこむ白を基調としたホールの様相をなし、この度、日本的創造の多彩な火花爆ぜる本展の舞台となった。
会場を訪れた来場者は、現代の日本アートを表象する別世界に圧倒され、すでに入り口で感嘆の声をあげる場面も多く見られた。
また、今回「個展形式」で一連展示された作品群は、作家の創作個性を遺憾なく発揮。現地パリ用本展facebookアカウントよりで本展を知った人々も新たに加わり、多くの来場者がその世界観を堪能していた。
天窓からの自然光が作品へ明るく降り注ぐ
日本独自の芸術美が個性を放った
個展部門やドローイング・コンクールも話題を集めた
東洋の内の日本という土壌に培った日本の美に見入った
多くのパリジャン、愛好家が熱心に見入る
会場芳名帳にも多くのメッセージが寄せられた
コミンヌ会場では約180点の作品が発表された
アートエリアでも人気画廊のギャラリー・デュ・マレ
クリスマスシーズンに賑わうヴォージュ広場前のギャラリー・デュ・マレ
アートシーンに新潮流を発信しつづけるパリ屈指のアートエリアにある別会場、本展協賛画廊ギャラリー・デュ・マレは、本展オープニングを告げる絢爛なネオンで粧われ、往来する人々の視線を集めた。回廊のウィンドウ越しに観える日本作品もまた人々の興味を掻き立てた。
誘われ来場した人々は皆、真剣な眼差しで作品を回覧、賛辞を口にした。
会期中、会場は名実ともにヴォージュ広場画廊回廊の主役となった。
美術愛好家、コレクター、画廊顧客で溢れかえる会場
美の今日的表現に感嘆の声があがる
東洋の内の日本という土壌に培った邦人の作品群
美術談義が文化として人々の生活に根付いている
多くの美術関係者が集結したベルニサージュで30回記念を祝した
12月9日(金)エスパス・コミンヌで開催されたベルニサージュ
9日にコミンヌ、10日にギャラリー・デュ・マレにて行われた本展の開催を祝すベルニサージュが開催された。
本サロン会長ジャン・マリ・ザッキ氏を、副会長エルベ・ロワリエ氏に加え、特別来賓のル・サロン会長ドゥラルフ女史、パリ随一の美術雑誌ユニベール・デザール編集長パトリス・ド・ラ・ペリエール氏、現役重鎮作家のアラン・ボンヌフォワ氏、ミシェル・バテュ女史など、欧州美術クラブと理念を共有し、長年の親交で結ばれた数多くの美術関係者・現地作家らが出席。
開催に併せ来仏した出品作家代表団と、現地情報雑誌や、美術誌、Facebookなどによるインターネットの告知を見て集まった愛好家も合流し、親睦を深めた。
ロワリエ氏とドゥラルフ ル・サロン会長
出品作家代表団とともに開催を祝した
来賓らは、会した愛好家や美術関係者を前に、今回の展覧に対し、高らかにスピーチ。
最後に、本サロンを牽引するザッキ氏が、パリ国際サロンの30回の歴史を振り返ると共に、「現代の日本アートの大パノラマ」と目を細め、次回以降も遥か続く本展に、喜びと希望の言葉を述べた。
その後、ザッキ氏は自ら来場した美術関係者らを先導し、邦人出品作品の一つ一つを紹介。
美術談議に花を咲かせた。
関係者で賑わうベルニサージュ
ボンヌフォア氏やバテュ女史などサロン主要作家が集結
作品を前に会話が進む作家たち
イタリア美術賞展関係者リオッタ氏も駆けつけた
ギャラリー・デュ・マレのベルニサージュ
来場者で溢れかえったマレ
参加作家に仏美術関係者らから寸評が贈られた
ザッキ、ロワリエ、ドゥラルフ、ドラ ペリエール4名による寸評
有意義な寸評に出品者も今後の制作の方向性を見出す
9日(金)、10日(土)両会場で行われた寸評会では、フランス画壇をリードする美術関係者から寸評を贈られる貴重な機会となった。
9日のコミンヌ会場では、本展会長のジャン・マリ・ザッキ氏をはじめ、エルベ・ロワリエ氏に加え、ル・サロン会長であるドゥラルフ女史、仏美術雑誌編集長のパトリス・ド・ラ・ペリエール氏が共演。参加作家はフランス画壇をリードする4名の視点から重層的な講評を得る稀有な機会に恵まれた。
●寸評会風景(一部)が動画でご覧いただけます
会期中、両会場では、様々な賛辞が寄せられ、作品販売に関する問い合わせも相次いだ。
最終的に、25F油彩作品をはじめ3点の買い上げが決定し、第30回の記念すべきパリ国際サロンは、無事3日間の会期を終了した。
様々な賛辞が寄せられ、作品販売に関する問い合わせも相次いだ
4名の視点から重層的な講評を得る稀有な機会
マレ会場でも寸評が行われた
国際基準における自身の作品の評価と真摯に向き合った
ドゥラルフ女史アトリエ訪問/ル・サロン会長のアトリエ
女史の人柄溢れるあたたかいアトリエ
作家の生活を肌で感じ取る事ができるアトリエ訪問
10日(土)には、パリ西部近郊にある、ル・サロン会長 ドゥラルフ女史のアトリエを訪問。
参加した日本からの作家代表団は、幾多の会場で賞賛を浴びたドゥラルフ女史の作品に囲まれ、女史の画家としての半生や、仔細な制作技法に熱心に耳を傾けた。
女史は膨大なクロッキーを次々開き披露、独創的現代性の根幹をなす、力強く太い線の描き方から特徴的な「ブルー」の作り方まで、日本の同胞に惜しげもなく語った。
(*アトリエレポートはこちら)
膨大なクロッキーを同胞に披露する女史
技法・画材・芸術に向き合う姿勢まで参加者達へ語った
真摯にして意欲溢れる説明に関心・感動した参加者たち
会期中に寄せられた様々な賛辞
会場にはパリ国際サロン30年のあゆみが展示された
サロン作家や愛好家と交流を深める
・「フランスにいながら、遥か日本の精神の深いところに触れることができた」
・「表現力、想像力、色彩、技術、ここにはすべてがある。すべてのアーティストに感謝と祝辞を贈りたい」
・偉大な展覧。マニフィック!日本のアーティストに友情を。おめでとう」
facebookでも現地レポート他風景が見られます
Facebook告知からの来場者も年々増加している
芸術に対する人々の関心の深さがサロンを成長させる
パトリス・ド・ラ・ペリエール氏による展覧会総評
「パリ国際サロン第30回記念展」総評/パトリス・ド・ラ・ペリエール「ユニベール・デザール」編集長
「パリ国際サロン(Salon International de Paris)」は、芸術愛好家たちを惹きつける才能、多彩な技術、多様なインスピレーションを兼ね備えた、注目に値する日本人作家たちを今日まで紹介してきた。
伝統的な作品から現代的な作品まで、30回を数える今回も厳格に精選された作品が我々の前に披露された。
自然や生命に対するひとつの哲学を我々に伝える、特筆すべき技法、創造的イマジネーション。本展はこれらを持ち合わせる日本人作家と出会える極めて有意義なサロンである。「詩や夢は舞台装置としてはたらきかけ、作品構成の重要なフレームとなる」。現前する作品は抽具象を問わず、そう物語っている。そして、ここに並ぶ多くの作品は、いずれにおいても種別や技法にも問うことなく、感情的な熱源を秘め、芸術的表現に優れ、観る者の心を震わせる。
日本の現代作家をよりよく知りたいと願う海外の愛好家の間で、この毎年行われる展覧会は、年を追うごとに重要かつ待ち望まれるイベントとなった。今日、私はそう断言できる。
展観全体を見渡せば、《日出ずる国》で生み出されるほぼ完璧な全景を目にすることができるからだ ― 油彩、アクリル、グワッシュ、水彩、伝統画、切り絵、書、写真、水墨、書、墨象、そしていくつかの立体・工芸作品…。
本展2会場において、それぞれの感性や芸術的解釈で、観る者は必ず何かを感じ取ることだろう。
最後に、この美しいサロンの創始者(記念すべきこの30回展を祝しているであろう)※故・馬郡俊文氏に、心からの友情と感謝の意を捧げる。
※欧州美術クラブ創立者故・馬郡俊文、「パリ国際サロン」を創立。
欧美国際公募美術賞展、JIAS日本国際美術家協会、新エコールドパリ浮世・絵美術家協会なども創立
美術誌ユニベール・デザール(1994年創刊)の共同創始者兼編集者
-フランス・韓国文化賞(2004年在仏韓国大使館)
-芸術勲章受勲(2005年フランス文化省)
-韓国文化功労翡翠褒賞(2007年韓国大統領)
-《陸軍公認画家》(写真部門)指名(2007年フランス防衛省)
-《芸術-科学-文学協会》ヴェルメイユメダル(2008年)
-パリ市ヴェルメイユメダル(2009年パリ市長)
-仏陸軍公認画家協会会長選出(2013年)他多数
仏美術関係者による本展へ寄せられた祝福のスピーチ(ベルニサージュより)
ジャン・マリ・ザッキ
19世紀、遥か日本の浮世絵画家たちが欧州画壇を席捲した。
同じく、創意に満ちた日本芸術がここ『パリ国際サロン』から発信され、21世紀のジャポニズムを吹き上げるだろう。それは、私の友人にして本サロンの創始者 故・馬郡俊文、故・アムビーユ※と分かち合った願いであり、彼らの遺言として刻まれている。そして、私はその胎動を確かに感じている。
この記念すべき第30回本展の驚くべきクオリティから。
ジャン・マリ・ザッキ
パリ国際サロン会長
ル・サロン名誉会長、JIAS名誉顧問、
新エコールドパリ浮世・絵・美術家協会会長、
サロン・ビオレ委員会名誉会長、
フランス軍公認画家協会会長 他
レジオン・ド=ヌール勲章騎士章授賞
他多数
エルベ・ロワリエ
多様な個性が受け入れられた美しい作品群。
異国の私には気付きがたい多くのことを示唆する偉大な叙情詩。
ブラヴォ!
エルベ・ロワリエ
パリ国際サロン副会長
サロン・ビオレ名誉会長、
サロン・ドトーヌ会員、
JIAS名誉顧問 他
フランス教育功労章(パルム・アカデミック)オフィシエ、
フランス芸術文化勲章シュバリエ他多数
1973~2013年までエコール・ポリテクニック芸術科で教鞭をとり、芸術科副学長まで栄進。
代表著書として美術史『Histoire de l'Art』、イタリアルネサンス美術関連。美術評論家としても受賞多数。
ドゥラルフ
それぞれの作品の放つ豊かで繊細な想像力と、それを見事に具現化する力強さが素晴らしい。
ドゥラルフ
ルサロン会長
パリ生まれ。
フランス国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)卒業。
フランス陸軍公認画家。
画家・建築家として、「ル・サロン」を中心に、フランス国内外にて幅広く活躍。
2013年よりル・サロンを運営。
フランス芸術家協会 会長に就任。
2014年には統合サロン「アール・オン・キャピタル」総裁を務める。
2002年、フランス学士院より芸術アカデミー賞、
2013年ル・サロン絵画部門金賞等、授賞多数。
※故・ポール・アムビーユ(1930-2010) パリ国際サロン初代会長
生前、長きに渡り、共に日仏画壇の発展に尽力。JIAS名誉顧問歴任。新エコールドパリ浮世・絵・美術家協会立案者であり初代会長。
テーラー財団前会長、フランス芸術家協会名誉会長、ロン・ド・ラ・ジュンヌ・パンチュール審査委員、国際芸術作品購入委員会委員など。
レジオン・ド=ヌール勲章騎士章、ローマ大賞第1位、国際現代美術展金賞、フランス芸術家協会ル・サロン大賞他多数
2017年 パリ国際サロン第30回記念展 受賞者発表
大 賞
大 賞 : 永名 二委 「滝韻」 水墨、68×60
ザッキ賞
ザッキ賞:別府 忠雄「舞妓」油彩、 90.9×72.7
ロワリエ賞
ロワリエ賞:篠原 文子 「大山」 油彩、 92.7×118.3
ユニベール・デザール賞
ユニベール・デザール賞:佐藤 唯 「サテ、ドコヘイコウカ I」ペン、 72×51
※副賞として、ユニベール・デザール誌編集長パトリス・ド・ラ・ペリエール氏より
寸評が贈られました。>>寸評を見る
ギャラリー・デュ・マレ賞
ギャラリー・デュ・マレ賞:東條 和人「翡翠」墨象、72×51
NEPU(浮世・絵)賞
NEPU(浮世・絵)賞:熊谷 睦男「延年の舞・老女<鎮魂16-3>」油彩、102×82.3、
NEPU(浮世・絵)賞:佐藤 喬「エコロジー・ジャパン09 «木» No.4」アクリル、 91×91、
優秀賞
優秀賞:藤井 孝仁「千梅花孔雀図」水彩、68×52
優秀賞:井上 純雄「待春」アクリル・エアーブラシ、31.8×41.0
優秀賞:栗原 光峰「興」創作書、190×96.4
優秀賞:山際 隆亮「Rouge II」ミクストメディア、29.8×26.5
賞審査員
ジャン・マリ・ザッキ(ル・サロン名誉会長/パリ国際サロン会長/NEPU会長/レジオン・ドヌール勲章受賞)
エルベ・ロワリエ(サロン・ビオレ名誉会長/フランス教育功労賞オフィシエ)
パトリス・ド・ラ・ペリエール(ユニベール・デザール編集長)
ポール・フランス・ルチアニ(ギャラリー・デュ・マレ代表)
馬郡 まりこ (欧州美術クラブ代表 審査アドバイザーとして参加)
その他現地報告
現地用Facebook(フランス語/日本語)にて、展覧会の模様、展示風景などご紹介しています。