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アトリエ訪問レポート

アトリエ訪問とは

欧州美術クラブは長きに渡り海外展関連イベントの一環として、文化交流を担う「現地協賛イベント」を企画・開催しています。
中でも人気を博す「アトリエ訪問」は、海外の重鎮作家と我々の間で培われた信頼関係により実現した研修のひとつです。

初めて出会う異国の作家達を自らの“聖地”であり、独創性が生まれる制作現場《アトリエ》へ迎え入れ、惜しみなく教授してくれるアーティスト達。
創作に対する姿勢を学び、芸術を生業とした日々の暮らしを肌で感ずる、これほど稀有な機会は、国際作家として世界を視野に活動を続ける上で、大きな糧となることでしょう....。

ルカ・ヨラン アトリエ訪問 2017年

2017年10月12日パリ12区。

画家でありル・サロン準役員兼会員、2017年ル・サロン金賞受賞を受賞した若きホープ、ルカ・ヨラン氏が、パリ国際サロン現地協賛イベントに参加した日本人作家代表団を温かく招き入れた。

  • ヨラン氏の作品が壁一面に飾られたアトリエ

  • 日本作家へ惜しみなく技法を紹介してくるヨラン氏

今も現役画家である父を持つ彼は、幼き頃より画家になることだけを考え、生まれ育った故郷ブルターニュにある父のアトリエで基礎を学んだ。
そして、自身の表現を探求し、独自の作風を見出した。

圧倒的画力。
現代的写実と神話的隠喩が融合する独自のコンポジション。作品全体の内から放たれた色と光沢。

彼の溢れんばかりのイマジネーションは、緻密で丁寧な彼自身のパフォーマンスにより秀逸な作品に成る。今回、若くして既にフランス画壇に確固たる地位を築く彼のアトリエで我々はその片鱗を味わった。

  • 17世紀の手法で絵の具をつくる

  • 樹脂を触らせてくれる氏

銅版画も静物画(まるで写真!)も制作する。

壁には裸体のラフスケッチから、濃淡まで描かれたデッサン画が何枚も貼られている。裸体を描くのは練習のため。早描きを心がけているという。他にも練習として、見知らぬ画家の作品やテクニックを徹底的に模倣し、描く。

「友人のオスカーだよ」と人体骨格標本を紹介された。人物を描く場合、背景を想起しながら、その構図、骨格にいたるまで《オスカー》を使いポーズを研究しつくし、モデルにリクエストする。そして、納得できる表現技法としてルネッサンス期からある正統で、クラシカルな手法で描く。

練習としてスケッチも怠らない

17世紀に活躍したフランドルの画家・ボンネックが編み出したというその技法を彼は完璧に習得した。数百年に渡り、受け継がれるには明白な理由が存在することを確信したからである。

「この手法で描くと絵の具がしっかり定着して、色ぶれがない。微妙なニュアンスをつけたい時にも少し油をさすことで表現できる」
と語る。

パレットや絵の具が無造作においてある机に物静かに向うと、絵の具をつくるデモストレーションを始めた。乾性油に樹脂をゆっくり回し溶かす。ゆっくり時間をかけて。実際は2~3日寝かした後、光沢を出すための様々な顔料を混ぜて色をつくる。もちろんピグメントやチューブ絵の具も使う。

  • 乾性油に樹脂を溶かすデモを披露

  • 17世紀の技法をストイックに続ける

作画の進行具合にあわせ、卵の黄身や乾性度の低い油を少しずつ混ぜていく。
ニスは使わない。

10年は描き上がった状態を保ち、その後も50~100年は剥離しない。時が経てば経つほど光沢は増すという。
「オランダ製のテレピン油は使い心地が良くてとても気にいっているんだ」と微笑みを浮かべた。

骨格模型に至るまで、ストイックに研究

  • プロ作家のアトリエで作家としての生き方にも触れた作家団

ルカ・ヨラン

1981年ブルターニュ生まれ。画家である父のアトリエで創作を習う。2013年から連作《災いからの光》を開始。神話的隠喩と現代的写実が融合する独自の作風を確立。フランス内外の国際展でその圧倒的な表現力を高く評価され、数々の賞を受賞。ル・サロン金賞、銀賞、銅賞を受賞。2012年からル・サロン会員。2014年からは絵画部門審査員・準役員も務める。パリとブルターニュのアトリエを行き来し制作を続ける。

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