パリ国際サロン/ドローイング・版画コンクール 報告
2024年 第37回パリ国際サロン報告
展覧会概要
第37回パリ国際サロン 2024
会期:2024年3月28日(木)~31日(日)
会場:バスティーユ・デザイン・センター
主催:欧州美術クラブ
※3月20日(水)~24日(日) ギャラリー・デュ・マレ特別展
「第37回パリ国際サロン ~ギャラリー・デュ・マレによる日本・フランス展~」を開催
パリの3~4区に広がるマレ地区からバスティーユ広場に至る一帯は、モダンアートの美術館やフランス革命ゆかりのスポットなど中世の優美な面影を残すファッション・エリアとして、昨今、あらためて注目を集める。このエリアを発信拠点に年1回開催する「パリ国際サロン(Salon International de Paris)」は、今回よりバスティーユ・デザイン・センターを新たな会場とし、2024年3月28日(木)より31日(日)まで第37回展として幕をあけた。
縦に大きなエントランスをくぐり抜け、会場建物のドアより数メートルの廊下の先に吹き抜け高天井の会場が広がる。天井からは迫力あるロング作品4点が来場者を出迎え、1850年頃より建築金物製造所の販売所兼ウェアハウスとして使用されていた歴史的建造物で、外観はもちろん床、壁、内装のほぼ全てが当時のまま現存する3フロアには、繊細かつ幅広い表現域に定評ある日本の現代アート294点が見事にコラボレート、来場した全ての観覧者を魅了した。
エントランス
高天井の会場 1階
仏画壇関係者、来場者と共に開催を祝う「ベルニサージュ」
来場した日本アーティスト
今回、20名以上の日本アーティストの来場を受け、会期初日、18時からのオープニングイベント“ベルニサージュ”を前に、本サロン会長ジャン・マリ・ザッキ氏、副会長エルベ ロワリエ氏、仏美術雑誌ユニベール・デザール編集長ジョセ ティボ氏らのご厚意による寸評会が催された。
時間を追うごとに、フランスを代表するサロンの重鎮ら本展関係者をはじめ、本展を心待ちにしていた観客らが次々に来場。皆、時に足をとめ、時に意見を交わし、作品1点1点を鑑賞しながら、ベルニサージュの始まりを待っていた。
開始予定時刻を少し過ぎた頃には会場は賑わいをみせ、ベルニサージュがスタート。本展を主催する欧州美術クラブ代表 馬郡 文平をはじめ関係者、来賓らが祝辞を述べ、ザッキ氏の乾杯の音頭を機に、そこかしこで熱心な会話や交流が始まった。
関係者、作家、来場者で賑わうベルニサージュ
交流する作家たち
多様な広報
会期中、インターネットやSNSでの告知、展覧会やギャラリーなどイベント情報掲載誌、情報サイトでの広報をみて来訪したという方も多く、来場者は皆、作品と真摯に対峙に、時間をかけ観覧した。会場を後にする際、作家らに向けた賛辞、会場と展覧の調和への賛美、本展との出会いへの感謝の言葉などを残した。中には、作品に対する質問を熱心に尋ねる方、本展がいかに素晴らしいかを熱く語る方もいた。「熟達したテクニックが素晴らしい」「表現が多彩」「力強い作品が多く、見応えがあった」「目、魂、心にとって素晴らしい展覧会」「現代日本の様々な側面が見られたようで良かった」「次回も楽しみにしている」など、芳名帳にメッセージを書き込んでくださる方も多く、また、成約数はわずかであったが、販売価格を尋ねる姿も頻繁にあった。
芳名帳に残されたメッセージ
「第37回パリ国際サロン ~ギャラリー・デュ・マレによる日本・フランス展~」
また、本展協賛先ギャラリー・デュ・マレ代表ポール・フランス・ルチアニ氏、マネージャー シリル・バタイユ氏と協議し、本展予告展として、販売期間を延長することを目的に、3月20日(水)~24日(日)までギャラリー・デュ・マレにて「第37回パリ国際サロン ~ギャラリー・デュ・マレによる日本・フランス展~」と題したスペシャル展を開催した。
ギャラリー前に広がるヴォージュ広場
ギャラリー外観
会期中、冬の終わりを告げる春先の風物詩である雷や雹に遭遇しながらも多くの来場者を迎え、大盛況のなか、惜しまれつつ4日間の会期を無事、終えた。
パリ国際サロン会長 ジャン・マリ・ザッキ氏によるスピーチ
今年、2024年は日本のアーティストによる294点もの作品が本展を彩り、たいへん盛況な第37回展となりました。
はるばる日本から20名を超える作家が来場されました。久しぶりに多くの日本作家と本展開催を共に祝う事ができ、とても嬉しく思います。
残念ながら来場が叶わなかった方もいらっしゃいますが、展覧された作品は全て皆さまの渾身作です。会場を訪れた観覧者は皆、作品を通じ、日本のアーティストの皆さんとの交流を楽しんだことでしょう。
欧州美術クラブ/JIASは、長年にわたりアートを介した交流の機会を創り続けています。
この37回を数えるサロンにも、フランスの画壇を担う美術協会、サロン・ドトーヌやル・サロンの関係者が集いました。
本サロンの扉はアートを愛する全ての人に開かれています。
かつての浮世絵との相互発展のように、フランス、そして日本、それぞれに新たな風を吹き込むサロンでありたいと願っています。
そして、その相互関係がもたらす刺激が、今後のアート界の発展に貢献するであろうことを確信しています。
創立者 馬郡俊文氏の志を引き継ぎ、氏と共に本サロン創立に尽力された関係者らが掲げた理念をそのままに、次世代の者たちにより継承されている。
歩みを止めることなく積極的に活動を続ける欧美/JIASスタッフに、そして出品を続ける日本作家の皆さまにお祝いと感謝を申し上げます。
ジョセ ティボ氏による展覧会総評
(『ユニベール・デザール』2024年冬号掲載)
パリ国際サロンの歴史は今後ますます日仏の芸術愛好家に知られることになるであろう。美術系団体のイベントが再編成される昨今、すなわち国際サロン・展示会業界が大きく変化するこの時期にあって、サロン業界は自身の独自性を維持・継承しようと模索している。そして彼らには声を上げる機会があるだけではなく、そうする義務があるともいえる。忠実さと誠実さは常にアートのクオリティにあらわれるだけではなく、その忠実さと誠実さこそが人間が存在する手段であることを、この第37回パリ国際サロンは思い起こさせるのである。
パリ国際サロンは、フランス文化を愛した日本のアート・プロモーター馬郡俊文が37年前に始めた、日仏交流に影響を与えてきた存在である。馬郡は経営者としての才能も併せ持っていたにも関わらず、常に文化人として生きる人であった。当時パリの芸術界は、世界で最も芸術を養成し、かつ最も目の肥えた者の集団とみなされていたが、彼は、将来有望か否かに関わらず、日本の芸術家をパリの芸術界に挑戦させたいと強く望んでいた。その後、馬郡家の後継者が彼の活動を引き継いだが、パリ国際サロンはその基本理念を保ち続け、芸術愛好家、探求心に満ちたコレクター、そしてもちろんヨーロッパでの経験を求める日本の芸術家同士の確固としたコミュニティを創った。そしてジャン・マリ・ザッキもまた、国際サロンやフランス国内の様々な団体に多く関わりを持つ名高いアーティストでありながら、本サロンの創立当初からの精神に敬意をはらい、同サロンのフランス側会長の職を担う。
今年2024年展は、展示作品の総合的なクオリティのみならず、作品群の芸術的なセレクション、そしてより広義には芸術家や作品、来場者を尊重した意味合いによって、一度も二度も我々を楽しませてくれるだろう。このようなことは通常、集団イベントにおいてたびたび軽んじられてしまう傾向にあることを忘れてはならない。
この展覧会の主催者は日本の芸術的な才能に信頼を置き、同サロンはその延長線上にある。和やかな雰囲気の中で、数日間このパリの空間を感動させるためにユーラシア大陸を横断してきた作品群の独創的で芸術的な声に耳を傾けられることは大変なる喜びである。
今日、芸術の国際的流行やトレンドには浮き沈みがあるにも関わらず、本サロンの担い手達の方針は信じられないほど一貫している。彼らのサロンが、中規模サロンの中で特筆すべき珍しいことは、ジャンルや技法の正確さと誠実さが、我々がいわゆる「美術」と呼ぶもの本来の意味とヨーロッパにおける美術の扱われ方について考えさせることである。
今日の芸術家が、我々の内にフランスの芸術文化の何かしらを保持しているのと同様に、それは感動的であると同時に模範的な文化の鏡である。この濃密なイベントで彼らが我々に気づかせてくれるのは、あまりにも純粋に見え、誰も彼らから何かを奪ったり、彼らに何かを付け加えたりできないであろうことを確信させるほど純粋だということである。言い換えれば、それは我々とは全くもって異なるものだということである。
ジョセ ティボ 「ユニベール・デザール」編集長
美術誌ユニベール・デザール(1994年創刊)の共同創始者兼編集者
1994年創刊の美術誌ユニベール・デザール誌パトリス・ド・ラ・ぺリエール編集長の右腕として長年にわたり編集主幹として活躍。日々、活きたアートに接し培われた確かな目を持ち、今回展においては、ミニ個展部門の個人講評を執筆、2021年からは審査員も務めている。
その他の展示風景
本展公式Facebookにて、展示風景を掲載しています。
●facebookアルバムはこちら
●Instagram ウォークスルー展示風景ムービー
第37回パリ国際サロン 受賞作品
受賞者発表は「第37回パリ国際サロン 受賞者一覧」をご覧ください