パリ国際サロン/ドローイング・版画コンクール 報告
2020年 第33回パリ国際サロン報告 / 受賞者一覧
会場には、特別展示として迎えた本サロン会長 画家ジャン・マリ・ザッキ氏と副会長 画家エルベ・ロワリエ氏の作品と、国際画壇に真価を問う日本作品133名200点(個展部門17名63点、ドローイング・版画コンクール部門40名61点含む)が華々しく展観された。
2020年 第33回パリ国際サロン
会期:2020年 2月 6日(木)~9日(日)
会場:パリ市3区 エスパス・コミンヌ
ギャラリー・デュ・マレ
エスパス・コミンヌ
会場ごとに催されたベルニサージュ
デモやストライキの最中に100名以上の来場者が駆けつけた
会場ごとに催されたオープニング・ベルニサージュには、会長、副会長、審査員兼講評者を担う仏美術雑誌ユニベール・デザール編集長パトリス・ド・ラ・ペリエール氏、協賛画廊ギャラリー・デュ・マレ代表ポール・フランス・ルチアニ女史をはじめ、特別来賓としてル・サロン会長ドゥラルフ女史、サロン・ドトーヌより、絵画部門長ルラグラン・ドゥニ氏、デッサン・水彩部門長ブルジュノ・ソフィー女史、デジタル・アート部門長シュミット・イザベル女史ほか、欧美/JIASと理念を共有し、長年の親交で結ばれた数多くの第一線でフランス画壇を背負う美術関係者、現地作家ら―ソルベルグ氏、ル・プラランス ナディーヌ女史、ロネル クリストフ氏etc―が列席。
開催に併せ来仏した日本作家ら30名程と合流し、親睦を深めた。
今やパリの風物詩とも言えるデモやストライキの影響を心配する声もあったが、現地美術関係者の招待客、美術愛好家やコレクター、雑誌やインターネット、SNSを通じて知ったというパリジャンら、例年を超える多くの来場者も加わり、作品1点1点を丁寧に鑑賞し、美術談義におおいに花を咲かせた。
また、作品を称賛する声とともに、作品を購入できると知って金額や作品について尋ねられるシーンも多く見受けられた。
サロン界の重鎮が駆けつけたベルニサージュ
代表の馬郡文平、本展会長ジャン・マリ・ザッキ、欧美スタッフ、パトリス・ド・ラ・ペリエール、ロワリエ、ル・サロン会長ドゥラルフ
サロン・ドトーヌ絵画部門長ルラグラン・ドゥニ氏
集まった多くの仏人サロン作家や愛好家
個性豊かな3名による寸評会
ペリエール氏、ザッキ氏
副会長ロワリエ氏
作家と向き合い真摯にアドバイスを贈る
エスパス・コミンヌ入り口外観
アトリエ訪問イベント
氏は、描き留めたデッサンをもとに描く得意の心象風景画をはじめ、代表的な数々の作品、こだわりをもつ絵具や手法など、惜しみなく紹介。制作の一コマとして、作家代表団より選んだモデルを描く実演を披露した。一通りを終えた後、奥様同席のもと賑々しく開催された昼食の宴にて本件は無事終了した。
大盛況のうちに閉幕となった
1985年来、パリで古くから芸術作品発表の場として定着していたサロン形式を採り入れ、邦人作家の優れた作品をパリで広く知らしめることを目的にスタートした本サロンは、いまや「毎秋冬のパリに必ずある “サロン”」として、毎年心待ちにするファンを着実に増やし続けている。
パトリス・ド・ラ・ペリエールによる本展総評
日本の現代アートシーンの大パノラマを一望のもとに展観する本サロンは、30余年前に我々の盟友 馬郡俊文※1によって創立。いまではパリの人々が毎年開催を心待ちにしている。
ここでは日本現代芸術のありとあらゆるテクニックを垣間見ることができる。水彩、油彩、アクリル、書、伝統芸術…他にも陶器、ガラス工芸、クラフトまで。
本サロンの初代会長はローマ賞絵画部門大賞(1955年)画家ポール・アンビーユ※2。その理念を継承する現会長ジャン=マリ・ザッキ氏、欧美/JIAS代表 馬郡文平氏。さらにはヴォージュ広場でギャラリー・デュ・マレを運営、良き理解者として日本作家をサポートするポール・フランス・ルチアニ女史とシリル・バタイユ氏。
技術性、創造性、独創性に優れ、厳選された作品群が、エスパス・コミンヌと老舗画廊ギャラリー・デュ・マレに展観されるのだ。訪れる者はこれら日本作品の革新性と多様性に間違いなく惹きつけられることだろう。
当時、「日出づる」国の多くの作家が、このサロンや欧美/JIASを介し、フランスの美術愛好家やコレクターらに見出され、現在の礎を築いた。そしてその後から今に至り、フランスにおいて、日本作家として作家道を歩んでいることは特筆すべきことである。
欧美/JIASは、1973年に馬郡俊文によって創立。数々の展覧会の中でも本「パリ国際サロン」は、推薦部門のほか、1作家3点から5点を展示する「ミニ個展部門」、公募部門である「ドローイング・版画コンクール部門」から成る。出品作家の中には、シャンゼリゼ大通りやグラン・パレで開催される「サロン・ドトーヌ」や「ル・サロン」など、芸術の都パリの歴史的サロンでの入選や受賞作家も多数含まれている。
パリの芸術愛好家らは、現代日本アートを一望する絶好の機会を得るだろう。
また、来場する数多くのアート関係者との交流、対話を通し、日本芸術を深く理解するだろう。
それこそが、日本作家によって贈られた、歓びと「多層的発見」に満ちた冒険なのである。
パトリス・ド・ラ・ペリエール
「ユニベール・デザール」編集長
会長ジャン・マリ・ザッキ氏のスピーチより
本サロンの会長として皆を代表し、来場者の皆様にも心より感謝申し上げます。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、このサロンの創立は、欧美/JIAS創業者 先代の馬郡俊文氏の熱い想いに依るところが大きい。氏とは1986年に出会ってから、フランスと日本の芸術を盛り立てるべく、共に歩んできました。ここにいる欧美/JIAS現代表 馬郡文平氏のことも彼がずいぶんと若い頃からよく知っています。
氏が先立たれた後もその後を継ぎ、今日このように会を盛り立ててくれたスタッフと作家の皆様にも、この場を借り、あらためて心より感謝申し上げます。
本サロンもそうですが、私が名誉会長、ドゥラルフ女史が現会長を務めるル・サロンやサロン・ドトーヌのようなその他のサロンでも日本作品の展示・紹介に携わる中、たくさんの優秀な日本作家とその作品に巡り合うことができました。
この8月には日本を代表する「国立新美術館」でフランス作家の作品が展示されます。そこにはサロン・ドトーヌ作家作品のほか、仏サロンの代表的な作家作品もたくさんあります。本日は不在ですが、サロン・ドトーヌ会長シルヴィ・ケクラン女史も日本の会場に出向き、秀逸作品との出会いや日本作家との士気の高めあいを楽しみにしていることでしょう。フランスと日本の作家がフランスで出会い、また東京でも出会う。この芸術を通じたコミュニケーションは、これからの世界のアートシーンを奮い起こすために、とても象徴的な活動だと私は信じています。
違う国のアートを学ぶということは、お互いの国にとって重要です。私にとってカリグラフィとの出会いが何より衝撃的でした。今日もいろいろな作品に出会い、気づきや驚きから得るものがあったように、長きに渡り、タイプの異なるカリグラフィ作家らとの出会を通じて、力強さやシンプルさの中での表現力などを学び、作品に反映したこともあります。本日、この場、この時を共有した作家、美術関係者、愛好者の皆様、ぜひ異国のアートとのめぐり逢いを大切に、ひとつでも多く学び得ていただければ幸いです。
パリ国際サロン 会長
ジャン・マリ・ザッキ
展示風景アルバム
facebookより風景アルバムが見られます
2020年 第33回パリ国際サロン 受賞者発表
大 賞
大 賞 : 武田 祐実 「闘争のアンビバレンス」 アクリル 80.3×100.0㎝
NEW(2020.07.01)
>受賞者インタビューはこちら
ザッキ賞
ザッキ賞:小畑 敦子 「四季」 油彩 72.8×91㎝
ロワリエ賞
ロワリエ賞: 大竹 和香子 「モンマルトル・サクレ・クール大聖堂をはるかに望む」コラージュ布絵 50.5×71.5㎝
ギャラリー・デュ・マレ賞
ギャラリー・デュ・マレ賞:永名 二委 「夢想の景」 水墨 51.5×43.5㎝
ユニベール・デザール賞
ユニベール・デザール賞:成田 雅子 「浮遊/floating」 銅版画 51.5×72.5㎝
※ユニベール・デザール誌編集長パトリス・ド・ラ・ペリエール氏よる寸評
NEPU賞
NEPU賞: 青山 繁 「どこえ行くのかな」 油彩 91×72.8㎝
NEPU賞:塩江 義宏 「奥の院への巡礼」 油彩 91.0×73.0㎝
優秀賞
優秀賞:今井 みどり 「水辺の白鷺」 油彩 73×61㎝
優秀賞:石井 紀子 「三日月の夜に…」 ペン画 60.6×72.7㎝
優秀賞:亀島 利子 「萩の露」 日本人形 50×51×51㎝
優秀賞:桃山 三 「禅‐因」 ミクストメディア 178×88㎝
優秀賞:篠原 文子 「春近き大山」 油彩 80.3×100㎝
優秀賞:渡辺 白游 「虎に仁」 墨象 46×35㎝
ドローイング大賞
Y 「無題」 木炭(紙) 43.2×35.6㎝
(ドローイング・コンクール部門より選出)
賞審査員
エルベ・ロワリエ(パリ国際サロン副会長/サロン・ビオレ名誉会長/フランス教育功労章オフィシエ)
ポール・フランス・ルチアニ(ギャラリー・デュ・マレ代表)
パトリス・ド・ラ・ペリエール(フランス美術雑誌 ユニベール・デザール編集長)
*審査アドバイザーとして・・・馬郡まりこ(欧州美術クラブ会長)、馬郡文平(同代表/JIAS日本国際美術家協会代表)