受賞者インタビュー
第2回 新エコールドパリ浮世・絵パリ展 大賞およびザッキ賞
木々の塊としての立体感や樹間にある空気まで描きたいと思い、
実際に現場に通い、数ヶ月かけて描きました
大賞・ザッキ賞 高嶋 公康「竹林」デッサン
受賞者インタビュー
- まずは受賞の感想をお聞かせください
- 欧州美術クラブを介しての出品を始めてちょうど10年。
節目という程でもないのですが、そうした年に個展部門出品のお誘いを頂き思い切って出してみました。
パリである程度まとまった数の作品を紹介して頂けるので、旧作も含めて5点。
現時点での自作の中の質の高い、と思うものを揃えて出したつもりです。
それが今回の結果。
今まで大きな賞の経験がないので、どんな顔をしたら良いのか…と、そんな気持ちです。
- 本作品を制作することになったきかっけや制作時に工夫した点、気を遣った点を教えてください
- このデッサンを描くときは、特に作品にしようとか、どういう構図で画面に収めるか、ということはあまり明確に定めていなくて、眼の前にある風景を、今まで勉強してきた要素を全て使って描写してみようと考えていました。
このデッサンについては風の表現を言われることが多いのですが、実は私には風に対する意識はあまり無くて、緑の塊—当時私の意識にあったコローの風景表現に見られるような—を描きたかったのです。
制作に関しては、木々の塊としての立体感や、樹間にある空気まで描きたいと思い、実際に現場に通い、人物モデルをデッサンする様に、イーゼルを設置し、1日数時間、数ヶ月かけて描きました。途中あまりの難しさに絵がバラバラになってしまいそうでしたが、何とか辿り着けた、という印象です。
- これからの展望、今後の抱負等を教えてください
- 40代に入り、自身の絵画の様式をようやく発見することが出来た、という思いを感じています。
若い頃は描きだしてみたものの、その先はどうなるか分からないという程不安定だった描写法も、これもどうやら安定し「様式」「方法」と状態が整ってきた、と考えています。
私もようやく、これから、と感じています。
いよいよ制作一筋に励むとき、と思っています。
ロジェ・ブイヨ氏による個人寸評より
いつの時代の画家も、多くの場合、絵画において最も難しいのはグレーを使いこなすことだということを知っている。そして高嶋公康のデッサンにおいて第一に指摘したいのは、鉛筆によって得られる彼の非常に美しいグレーである。
アングルが「デッサンは芸術の誠である」と言ったのは有名だ。しかし、彼にとってそれは常に色をのせる為であった。
彼はデッサンの中に理想的な表現方法を見出し、彼のグレーの階調は、色を使わずして、彼の豊潤な造形的想像力をディテールに至るまで描き出すことが可能なのである。
彼のデッサンは、竹林を吹く風のポートレートも、モデルの心理の内奥にまで迫った肖像画も、真の絵画である。
これほどの才能と、霊感をもって扱われる鉛筆は、インクや水彩の淡彩画よりも鮮やかに、生物の最も神秘的な側面、物質の最も奥深くにある側面を見せてくれる。