受賞者インタビュー
ル・サロン展 1992 金賞 茂木良作
茂木良作 「歓喜」130×96 前衛書
そういう力が一つの方向に結集し、お互いの切磋向上は勿論、広く国際的にも刺激し合い、交響し合えるようになったら、これは大変な喜びです
「ル・サロン展金賞に思う」・・・茂木良作(1993年JIAS誌より)
私は長く書の道に携わってきました。
戦後間もない頃からは、閉鎖的で一家伝承的な書作品とは異なった方向--書線による造形作品を追い求めてきました。
つまり、必ずしも文字にこだわることなく、一方では、一貫性、一回性ともいうべき書の表現生命を堅持しながら、書の用具・用材を使って得意な世界の表現を試みてきました。
そのようなことから、もう数十年前からJIAS日本国際美術家協会にも加入し、欧美美術賞展や、ホアン・ミロ国際デッサンコンクール、最近ではサロン・ドトンヌ等にも出品してきました。
かねがね、三百年の輝かしい歴史を持つル・サロンが、幽玄、迫真の白黒の作品を待望していることを馬郡代表から伺っておりましたところ、たまたま昨年夏、ル・サロンの前会長アルノー・ドートリーブ氏が来日。その折、馬郡氏の計らいで有志書家数十名の作品を銀座の会場に展観し、ドートリーブ氏から一点一点親しく批評を受ける機会を設けられました。
批評は総じて大変に好評で、白黒の明解さと迫真の作品の大きな期待が寄せられました。
そんな中で、91年に続いて92年ル・サロンに出品したところ、図らずも金賞受賞の知らせを受けました。そんなに若くもない私にとっては、今更らという気がしないでもありませんが、探求・試行の書美術的表現が、伝統あるサロンで一つの評価を得たということを、広い視野で喜びたいと思います。
近年、書道界にも自我に目覚めた清新な表現を試みる仲間達が全国各地に輩出してきていることは、大変に心強いことです。
そういう力が一つの方向に結集し、お互いの切磋向上は勿論、広く国際的にも刺激し合い、交響し合えるようになったら、これは大変な喜びです。
ーーーー今回の受賞に当たり、このことを心から強く希うものであります。
(1993JIAS通信)
1993年発行JIAS機関紙より
※「歓喜」で表現されている字は「神」という字であり、ベートーベンの「歓喜の歌」を聞きながら制作されたとの事。(弟子:根岸君子女史より)
茂木良作・タラッツ2人展
彼方(1)
茂木良作 書歴
1925年、栃木県足利市栄町生まれ/学習院大学卒業
書を岡部蒼風、大沢雅休両師に学ぶ
書の古典を踏まえ、書と絵画の中間的表現を志向
「日本現代書道スペイン展」第2席(バルセロナ)
「日仏現代美術展」クリティック賞第1席(パリ、東京)
「オーストラリア美術賞展」大賞(シドニー)
ヨーロッパ科学・芸術・文学アカデミー会員
「ホアン・ミロコンクール」入選(バルセロナ)
「サロン・ドトンヌ展」入選(パリ)
「ル・サロン展」金賞(パリ)
「日本の現代書道と絵画展」(プラハ)
「日ソ現代美術展」(東京)
「日仏現代美術展」(パリ)
「茂木良作・タラッツ2人展」(足利)
チェコスロバキア文化庁ながびにプラハ国立美術館から招聘され、講演と実技披露(プラハ)
元JIAS日本国際美術家協会会員
ル・サロン会員
サロン・ドトーヌ会員
作品の主な収蔵先:チェコ、ベネチア、カナダ、ペルー、ロシア、スイス、など多数
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